去る5月12日土曜日は、わたしの行っている陶芸工房でお祭りが開催されました。ここ数日はその準備に追われていましたが、全員で力を合わせた結果、大成功。お天気にも恵まれてポカポカ陽気の中、たくさんの人が来てくれました。
朝の準備風景
催しとしてはロクロのデモンストレーション、窯出し、粘土遊びコーナー、楽のデモンストレーション、作品販売が軽食とともにあります。その中でわたしは楽のデモンストレーションを担当しました。
楽のデモンストレーションには大きく分けて2つの見せ場がありました。一つは馬の毛を燃やして模様を施すものと、もう一つは作品を高温のまま取り出し、可燃物と一緒に鉄の樽に入れて強還元を掛けるプロセスです。
一つ目の馬の毛。窯の中が摂氏730度付近(華氏:約1350度)に達したあたりで、釉薬を施していない器を取り出します。予め用意してあったターンテーブルの上に置き、数本ずつゆっくりと馬の毛を作品の表面に置いて行くと、まだ高温を保っている器の上で馬の毛が焦げるように燃えて、炭素として残ります。器は急激に冷えていくので、馬の毛を燃やせる時間も限られていますが、慌てずゆっくりと施したい形を想像しながら作業を進めます。
これには子供たちも強い関心を示してくれて、後で興奮した様子で、「すごかったー!」と伝えてくれました。
次にメインのデモンストレーションです。これは窯の内部が目指す最高温度、摂氏980(華氏:約1800度)付近に達した時に窯を開け、鉄のハサミ道具で作品を取り出し、木くずや新聞紙などの入った鉄の樽に入れます。すると作品が高温なため、樽内の可燃物に着火します。さらにそこに細かい木屑を振りかけると、一気に燃え上がります。
数秒燃え上がらせたあとはキッチリと蓋をし、強還元をかけます。こうすることで炭素が釉薬や貫入、生地に入り込みます。貫入に入った炭素は黒い線のように見えます。全体的にも深みのある色合いに仕上がります。
これを15回繰り返します。ほとんどの作業が途切れることなく続き、また窯のそばにいるのでとても暑いので、汗ビッショリになります。事前に水分補給をしっかりとしましたが、それでも終わったあとは喉がカラカラになりました。
できた作品はキレイに洗って磨きます。また後日、馬の毛を燃やしている写真と一緒にここに載せようと思います。
今回はいつもと違ってたくさんの観衆の中上記の作業をしました。窯から作品を取り出すときや炎が上がる瞬間や、タルの蓋を開けて作品を見るときなど、ところどころで歓声が聞こえました。かなりの集中を強いられる楽焼きを必死にやっているところを大勢の人に見られるというのは、なんだか不思議な感覚でした。
この日はたくさんの人といろんな話をしていっぱい笑いました。強烈な一瞬の連続のような一日でした。アメリカに来てのこの3年が集約されたという感じです。
わかってはいたことですが、この工房は素敵な人ばかりが集まっていることも再確認しました。天気がいいことも相まって、緑にあふれたキラキラした庭の中でふと、素晴らしい場所で、素晴らしい人達に囲まれて、奇跡のような3年を過ごしたんだと気づきました。来月にはロンドンに引っ越します。それまでの間、ここでの一日一日を大切に過ごそうと思います。